戦略的にオウンドメディアを制作するためのリサーチ手順

戦略的にオウンドメディアを制作するためのリサーチ手順

戦略的にオウンドメディア制作プロジェクトを成功させるには、どのようなリサーチプロセスを採用することが適切なのでしょうか。

適切で、必要充分な情報があればあるだけ、オウンドメディアの成功確率は高まります。

こちらの「オウンドメディアを構築する手順14ステップ」という記事では、オウンドメディアを構築するための、簡易な手順を紹介しています。あくまでも簡易な手順ですので、もっと本格的に取り組みたい人には、物足りないかもしれません。

コンテンツイズキング株式会社では、こういった簡易なプロセスに正当性をもたらすためにも、WEBマーケティングの見地から、さまざまなリサーチツール、フレームワークを活用しています。

戦略的にオウンドメディアを制作するためのリサーチ手順今回は、その中でも「リサーチ段階」でのリサーチ手順を具体的に紹介します。事業全体の戦略設定のときに行うべきリサーチと同様、フレームワークやチェックリストを活用したものです。

そもそもコンテンツマーケティングをやるべきか、オウンドメディアを活用すべきか、ということも、これらのフレームワークやチェックリストを活用することでハッキリしてくるでしょう。

以下、戦略的にオウンドメディアを制作するためのリサーチ手順を解説していきます。

1.品揃え・商品進化ポジショニングで成長上の位置づけとオウンドメディアの役割を確認

将来に向かった時間軸に沿って、現在の事業や商品をどのように位置づけていくかを明確にします。

これによって、事業戦略全体から見たときの今回のプロジェクトの役割、オウンドメディアの役割がわかりやすくなります。また、事業をいくつかのフェーズに分けて成長させていくイメージが共有しやすくなります。

具体的には、このような項目をチェックします。

□ 品揃えの全体像を示すだけではなく、ユーザーにとってのソリューションとして、なぜ、その品揃えにしているのか、など、「品揃えの意味」を示すために、オウンドメディアを活用できないか

□ 現在の商品を今後、どのように改良、進化および深化させていくのか、という戦略に則ったオウンドメディアとは、どうあるべきか

□ 上記の方向性や狙いを、すべてのステークホルダー(経営幹部、従業員、取引先、および顧客)に示して、共有するために、オウンドメディアをどう活用すべきか

この「共有」というのがじつは、意外に大切で、ちゃんと共有しておかなければ、「社長がまた、オウンドメディアという新しいものを始めた」というように、冷めた目で見られかねませんし、そうなると必要な協力も得られにくくなります。

2.「戦略パレット(BCG)」に基づく戦略アプローチを把握

オウンドメディアを中心としたコンテンツマーケティングも、市場の変化が予測できるときとできないときでは、取るべき戦略が変わります。

世界的な戦略系コンサルティングファームであるボストンコンサルティンググループ(The Boston Consulting Group)の提唱する「戦略パレット」を活用して、環境分析の結果、5種類の戦略アプローチの中から、最適な戦略アプローチを把握します。

これによって、市場の戦略トレンドにも配慮し、洞察を深めることができ、また、具体的には、どういう目的でオウンドメディア制作を進めるのかということが決めやすくなったり、WEBマーケティングに過大な期待を抱いてしまうというようなことも避けられます。

5つの戦略アプローチの型一覧

 

1.「クラシカル」戦略アプローチ

市場の変化を予想しやすいが、大きく作り変えることはできない。そのため、基本的には、規模や差別化、優位性を追求したポジショニングの戦略を取る。

2.「アダプティブ」戦略アプローチ

市場の変化が予想しづらく、その状況を大きく作り替えることもできない。そのため、計画が頻繁に変更できる体制を作り、継続的な実験的試みを繰り返して成功に近づいていくアプローチが妥当。

3.「ビジョナリー」戦略アプローチ

市場の変化を予想しやすく、作り変えることもできる。そのため、積極的に新市場を作り出すか既存市場を破壊する企業になり、ファーストプレーヤーとしての恩恵を最大化する。

4.「シェーピング」戦略アプローチ

市場の変化は予測しづらいが作り変えることができる市場。そのため、オーケストレーターとしてパートナーを巻き込みながら、調整を繰り返し、進化しながら、予測しづらい市場を「だったら作ってやる」の精神で、協業し、協創していく。

5.「リニューアル」戦略アプローチ

リソースの制約が厳しいため、まずは、経営資源を確保し、同時に事業フォーカスを再定義するなどして存続可能性を高める。成長軌道に乗ったあと、ほかの4つのアプローチのいずれかで成長を持続させていく。

参考リンク
『戦略にこそ「戦略」が必要だ』
ボストンコンサルティンググループによる公式サイト
https://www.bcgperspectives.com/yourstrategyneedsastrategy-japan

3.成長マトリクスと成長戦略から、オウンドメディアの役割を検討

アンゾフの成長戦略をアレンジして、事業の成長戦略を大まかに把握します。成長戦略には「市場浸透戦略」「新製品開発戦略」「市場開拓戦略」「多角化戦略」があり、いずれの戦略を採用すべきかによって、重視すべき打ち手も変わります。

たとえば、オウンドメディアの中心テーマを既存のブランドとして展開するのか、新規ブランド中心としたオウンドメディアを作るのか、ということや、インターネット上でのキャラクター、振る舞いなども、成長戦略を把握することで自明となります。

アンゾフの成長マトリクスと成長戦略一覧

 

「市場浸透戦略」

競争に勝ちながらマーケットシェアを高めていく戦略です。新規顧客を獲得することと同時に、ロイヤルカスタマーを増やしていくための施策などが一般的です。シンプルに説明すると「今の市場にいるまだ買っていない人に買ってもらい、すでに買ってくれている人にはもっと買ってもらう」ということです。

「新製品開発戦略」

新製品を現在リーチ可能なユーザーへ提案することで事業規模を拡大させていく戦略です。シンプルに説明すると「今の顧客に新しい物を売る」ということです。

「市場開拓戦略」

今の製品を、新しい市場、セグメンテーションへと広げることで成長する戦略です。女性向け商品を男性向けにしたり、海外展開を図ったりすることが典型的です。

「多角化戦略」

今の製品とは別の製品を、別の市場に送り出す、いわば未体験ゾーンへの進出です。多角化自体は、いわゆる「選択と集中」に反するとして、毛嫌いされがちですが、隙あらばの精神で、積極的に検討していくべきです。その理由としては、異分野の成功事例をより深く理解することができ、そこから振り返って見つめ直した自社のコア事業成長へのヒントが見つかったり、新しい人的資源の獲得などにつながるケースが多いためです。ただし、撤退ラインを決めて参入するなど、セーフティーな環境の中での勝負を心がけつつ、大胆な攻め方を実現していくようなスタイルが理想的です。
また、多角化の中でも、「水平型多角化」「垂直型多角化」「集中型多角化」「集成型多角化」のいずれかによって、重点施策が変わってきます。

4.製品ライフサイクル(PLC)で戦略シナリオをイメージ

今の製品やビジネスの寿命はどれくらいで、今、何をすべきか、そして、WEBマーケティングでは何をすべきか、はっきりと理解している企業は少なく、どうしても施策が後手に回ることが往々にしてあります。製品ライフサイクルの段階には、導入期、成長期、成熟期、衰退期があります。また、目指す市場シェアの段階ごとにおいては、ランチェスター戦略を参考にしながら、採用すべき戦略シナリオを決めるといいでしょう。

□導入期

売上は少なく一般に高コストで利益は出にくい。市場形成のために先行投資がかさむ。顧客は意味的イノベーターが中心。競争はほとんどない。
戦略としては基本的な単一商品ラインに絞り、ひたすら製品認知と試用促進にコストを集中させ、選ばれた流通チャネルにて展開。

□成長期

売上は急上昇し、コストもこなれてくる。それにつれ利益も増えてくる。顧客は新しいものに比較的敏感な意味的アーリーアダプターが中心。競合も増え、相対的な価値がユーザーの選択基準となっていく段階。
戦略としては、この時期に市場シェアを最大化させ、その後の利益の最大化を図る。

製品ラインを拡張させ、サービスや保証を付加しながら、できれば市場浸透価格でシェアを拡大させる。一般的にはマス広告を中心に展開し、時間がかかる接近戦での販促の比率は減らしていくべき。

□成熟期

売上は微増もしくは横ばい。コストが下がるので高収益。普通のユーザーが普通に購入している。競争勢力も安定している。
守りの戦略を採用し、ブランドやモデル、流通チャネルを多様化させたり、競争価格で市場シェアを防衛していく。守りと言っても競合も強くなっているので、競合からのブランドチェンジを促すマーケティング施策として、ブランド差異やベネフィットの認知などを積極的に促す。

□衰退期

売上高は下降する。コストはかからないが利益も出にくい。市場に行き渡った状態。競合も見切りをつけて撤退もしくは放置するので競争は少ない。
さらなる低コスト化を図り、過去に培ったブランドによる恩恵を確保する。製造コストや在庫リスクがある場合は、売れない商品ラインナップを減らし効率化し、価格もニーズによって引き下げながら、市場の延命を図る。コアユーザーへの広告活動だけは低予算で継続。低採算販路からは撤退し、販促活動も縮小させるのが定石。

なお、成熟期や衰退期には、次のS字カーブを描く準備が必要ですが、そのためにも、新規需要の確保を見据えたオウンドメディア戦略が必要になります。

オウンドメディアのネタづくりにも、このような発想で、戦略的に取り組むべきです。

5.PEST分析で外部環境(追い風か、向かい風か)を把握

事業を取り巻く4つの切り口で外部環境を分析します。追い風か、もしくは向かい風か、を判断し、対応します。

4つの切り口であるPolitics(政治的環境)、Economic(経済的環境)、Social(社会的環境)、Technology(技術的環境)の頭文字を取って「PEST分析」といいます。

特に技術環境の変化は、WEB上のプロジェクトに直接的な影響を与えることが多く、配慮が必要です。また、「景品表示法」や「薬機法」などの変化をもれなく把握して、いち早く対応するためにも、この段階でのPEST分析は有効です。

オウンドメディアの方向性や内容にも影響を与えると予想される項目は要チェックです。

PEST分析の項目チェックリスト

 

Politics(政治的環境)

 □法律・法規制・判例
 □税制・金利
 □政府成長戦略・政府主導政策
 □予算投下・優遇産業

Economic(経済的環境)

 □景気・景況感・株価
 □物価
 □為替・海外資本
 □業界再編
 □企業設備投資

Social(社会的環境)

 □人口動態
 □世論・空気・意識
 □流行・ブーム
 □マイクロトレンド・トレンド・メガトレンド
 □メディア環境
 □ライフスタイル
 □気候・自然環境
 □ネット使用環境

Technology(技術的環境)

 □技術革新・イノベーション
 □特許
 □新エネルギー
 □新技術・インフラ
 □インターネット分野でのキープレイヤー

6.5F(ファイブ・フォース)分析で競争環境を把握

戦略的にオウンドメディアを制作するためのリサーチ手順その業界はおいしいか、つまり収益を上げ続けやすいといえるのか。もしくは脅威にさらされているとしたらどんな脅威なのか。マイケル・ポーターによる5Fで、おもに業界の競争環境を把握します。5Fの各項目をチェックすることで、有効な打ち手が見つかることもあります。

WEB上では、一瞬で台頭してきた競合などのプレイヤーに市場シェアを奪われてしまうことも多く、周囲を見渡すことで兆しを把握し、先手を打ちながら対策していくことが重要となります。

その対策の1つとして、コンテンツによって先手先手を打っていけるオウンドメディアが有効なのは言うまでもありません。

5F( five forces analysis )の項目チェックリスト

 

1.新規参入者(参入障壁しやすいか)

 □規模の経済
 □製品力とそれを生み出す源泉
 □ブランド
 □スイッチングコスト(サンクコスト)
 □流通内での関係性
 □参入時の設備投資・資金力
 □調達容易性
 □報復・積極的防衛
 □法制度・行政の方針
 □市場規模

2.代替品(他の選択肢が出てくるか)

 □相対的価値
 □スイッチングコスト
 □愛着・嗜好性
 □カテゴリーへの理解・浸透度
 □製品選択理由

3.売り手(仕入れ条件交渉してくるか)

 □依存度
 □協創貢献度
 □スイッチングコスト
 □川上統合・川下統合の可能性
 □人間関係・契約条件・義務
 □情報コントロール力
 □代替品・選択肢

4.買い手(他社で買われないか)

 □依存度
 □ニーズの強さ・必要性
 □スイッチングコスト
 □川上統合力
 □情報入手力
 □情報発信力・影響力
 □代替品・選択肢

5.競争企業(競争に勝てるか)

 □事業全体の集中・依存度
 □強みと弱みの源泉の把握
 □競合の情報入手力
 □市場規模と成長率
 □撤退障壁・撤退意向

7.7S(セブンエス)で経営資源のシナジーを検討

7Sは、世界的な戦略コンサルティングファームであるマッキンゼー・アンド・カンパニーが提唱しました。組織と人には、経営層の判断などで比較的変えやすいハードの3Sと、長期的に培っていくべきソフトの4Sがあります。

WEBマーケティングの世界では相対的な強さが重要になります。そのため、「競合(サイト)と比べてどうか」という視点で7Sを評価し、競争優位性の源泉としたり、弱い部分を補完したりします。

もちろん、競合を見過ぎて、ユーザーを見るのがおろそかにならないように注意すべきです。

7Sの項目リスト

 
ハードのS(組織の構造)
 1.戦略 Strategy
 2.組織 Structure
 3.システム System

ソフトのS(人)
 4.価値観 Shared Value
 5.スキル Skill
 6.人材 Staff
 7.文化 Style

8.4C分析で市場内のプレーヤーを整理

Customer(顧客)、Company(自社)、Competitor(競合他社)にChannel(流通)を加えた分析手法です。私たちの経験上、一般的な3C分析よりも使いやすく、ほかのフレームワークとの相性も考慮し、この4Cという切り口に落ち着きました。

9.競争地位戦略の活用

競争地位戦略の類型(リーダー、チャレンジャー、フォロワー、ニッチャー)とは、コトラーによる戦略的ポジションの分類を参考に、嶋口充輝氏が類型化した競争地位戦略の類型です。

競争市場内で自社が取るべき戦略を明確にし、選択しやすくします。ただし、現在の位置が永続することにはならず、成長目標や経営資源によっては、たとえば、フォロワーであっても、脱フォロワーを掲げてチャレンジャーに挑むというようなことも選択肢となります。

競争地位をはっきりさせたことで無駄をそぎ落とすことに成功し、事業全体の売上を飛躍的に改善したことが過去に何度かありました。

また、オウンドメディア自体にも、ライバルが存在しますので、競争地位戦略の類型を活用して、ライバルのオウンドメディアに真っ向勝負を挑むのか、すき間(ニッチ)を狙うのか、などを検討します。

10.VRIO分析で「本当の強み」を把握

それは本当に強みと言えるか。ここまでに「強み」と思ったことが、本当に強みとして機能するのかということを判断するための基準です。次の4つのことです。

□ 経済価値 Value:機会や脅威に対応できるだけの経営資源や活用能力があるか。本当に経営に役立つのか、という価値判断。

□ 希少性 Rarity:その経営資源や機会を活用できるのは自社だけか、それとも多くの企業が活用できるのか、という価値判断。

□ 模倣困難性 Inimitability:簡単にまねしようと思ってもできないかどうか、という価値判断。

□ 組織 Organization:経営資源としての強みを活用しうるだけの組織体制になっているか、という判断。

自己満足だけのオウンドメディアにならないようにするためにも、しっかりと考えていくべきです。

ここまでが、オウンドメディアの方向性や戦略策定のためのリサーチ(外部・内部環境分析)手順の解説でした。

戦略的にオウンドメディアを制作する意味

今回紹介したものは、少し本格的に経営を勉強してきた人にとっては、さんざん使い慣れたはずの戦略理論や、それらに基づくフレームワーク類です。

ほとんどの中小企業の経営者は、「こういうことを勉強してこなかったんだよね」と言います。ですが、私たち自身も、これらのチェックリストやフレームワークを使うたびに毎回重要なヒントが見つかりますし、「もし気づいていなかったら、今頃絶対に間違ったオウンドメディアを作ってしまっていたに違いない!」と感じることも多いです。

オウンドメディア制作に必要な新しいヒントを得るためだけではなく、思い込みを排除するために、間違った方向のオウンドメディアを作らないために、これらのツールを活用することも重要です。

戦略的にオウンドメディアが作れるようになると、失敗の確率が大幅に減ります。

慣れていないととっつきにくいこれらのリサーチ・分析ツールですが、慣れるとはまります。ぜひ、出来そうなところからだけでも、取り組んでみてください。

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