【インタビュー】文化の差を埋める「ローカリゼーション」で海外ユーザーの心もつかむ翻訳のプロフェッショナル

【インタビュー】文化の差を埋める「ローカリゼーション」で海外ユーザーの心もつかむ翻訳のプロフェッショナル

オウンドメディアも、海外のユーザーが読むことを意識していく必要があります。しかし、一口に「翻訳」といっても、ひとつひとつの記事にこめた思いや意味は、海外のユーザーにどこまで伝わるのでしょうか。
今回は、Webをはじめ、様々な分野のローカリゼーションで高い顧客満足度を誇っている翻訳のプロ、DNAメディア株式会社の中尾勝様(代表取締役)のインタビュー記事を掲載します。
翻訳の仕事といえば、語学力を重視するイメージがありますが、その仕事で求められる能力には、意外なものもあるようです。最近注目されている機械翻訳の話題など、翻訳のあれこれについて、お話を伺いました。

心に響く文章に翻訳するために、安さ早さは売りにしない

御社はどんなサービスを提供しているのでしょうか?

WEBサイトなどのデジタルコンテンツ製作や、高品質の翻訳をはじめとするローカリゼーションサービスを提供しています。今後はデジタルマーケティングの事業部を立ち上げて、マーケティング手法を用いたサービスの提供も考えております。

御社のこだわり、他社にはない特徴などはございますか?

弊社の特徴は、コンテンツでも翻訳でも、とにかく品質が高いということです。「安い、早い」の文字は私たちのサービスにはありません。品質がどうしてもさがってしまいますので、そういったサービスは提供しません。高い品質を保つというポリシーに共感していただけるお客様にご利用いただいています。
翻訳における品質の高さというものは、日本語としてこなれたものであること、お客様のこころに響く文章であることが条件になります。弊社が行っているマーケティング関係の翻訳では、最終的な読者が会社の意思決定権者など重要なお客様となりますので、ときには原文から離れ、わかりやすい、魅力的な文章を作ることを心がけています。

なるほど。ただ直訳したような文章では、日本語として分かりにくいですし、記憶にも残りにくいですよね。お客様はどういった方が多いのでしょうか?

弊社にご依頼いただくのは、品質を第一に考えているお客様が多いですね。弊社は、料金は通常より高めですが、徹底的に品質管理をしてお客様の内部コストを下げているので、最終的にはお客様のメリットにつながります。

高い品質を保つために、どういったことをされているのでしょうか?

現段階では、会社全体で高品質の翻訳成果物を共有することを心掛けています。あとはきちんと結果を出し、お客様に継続して利用していただけるように努めています。

ただ翻訳するだけでは文化の差は埋められない

DNAメディア株式会社 代表取締役 中尾勝氏お客様からの感想、反応はどうですか?

「品質が高く、頼んでよかった」、「他社と比較して品質が全然違うので、これからもどんどんお願いしたい」というお声をいただきます。

お客様とのお付き合いが長いために、 品質がどんどん高くなっていく、という面もあるのでしょうか?

ありますね。弊社では翻訳者をあまり分散せずに、日本語力、英語力がしっかりしていて、それぞれの分野に詳しい人に集中してお願いしています。そうすると、翻訳をする人にも、お客様の歴史、製品の変遷、製品群などのナレッジが蓄積されていきますので、結果的に品質が向上します。

単なる言葉の置き換えではなく、文化なども踏まえたローカリゼーションができるということも御社の強みだと思うのですが。

そうですね。『無私の日本人』(磯田道史著、文春文庫)という小説を英語化するプロジェクトでは、当時の風俗や、「明治維新」などの歴史上の固有名詞などについて簡単な解説を付け加えることで、文化的な差異を埋めるための細かな工夫をしています。

他社とくらべて品質が高いとのことですが、お客様は他社で翻訳をしたうえで御社に依頼してくることが多いのでしょうか?

そういったケースもありますが、口コミで弊社に依頼して下さるお客様も多いですね。

不況をきかっけに、メイン事業を大きく変更

DNAメディア株式会社 代表取締役 中尾勝氏DNAメディアを創業されてからの歴史や、現在の事業ステージ、苦労したことなどについて教えて下さい。

まだ会社員をしていたころ、デジタルコンテンツとローカリゼーションで業務がたちあがる目途が立ったことが創業のきっかけです。最初のうちはデジタルコンテンツが会社を引っ張ってくれて、非常にうまく回転しました。ところが、いわゆる出版不況になり、デジタルコンテンツのビジネスモデルが次第に崩れてしまいました。それを機に、ローカリゼーションを伸ばしはじめたのが10年少し前です。主たる事業をデジタルコンテンツからローカリゼーションに切り替えるときには、それを私自身が理解するための期間が必要だったため苦労しました。会社の業界での立ち位置、人員構成も含めて、会社の主軸をローカリゼーションに変えていくのは大変でした。

御社が対応可能な言語は、何か国語ぐらいあるのでしょうか?

いろんなネットワークがありますので、やれと言われれば全部やります。その中でも、英語はもちろんのこと、中国語、韓国語、ベトナム語、ミャンマー語などアジア系の言語が得意です。

文章能力だけでなく、その国の文化や習慣を知っている方のほうがより良い翻訳をできると思いますが、そういう人材を見つける苦労というのはありますか?

翻訳の人材探しでは、翻訳を勉強する学校にリクルーティングに行きますね。そこで「DNA Mediaというのは品質をどの会社よりも大切に考えている会社だよ、ぜひ一緒にやってみませんか」と呼びかけます。今いる翻訳関連の社員はその学校経由の子が多いのですが、いい人材が入ってきてくれていると思います。一人前になるには時間がかかりますが、そうなればすごく戦力になります。

中尾社長は、若かりし頃、写真週刊誌『フォーカス』の編集部で記者をしていたそうです。
記者の仕事をしていた経験が、今のお仕事につながっている部分はありますか?

週刊誌の記者がすごいのは、2~3日あれば、普通ではとても取材できないようなことまで取材しちゃうこと。自分も最後の頃は少しできるようになりましたけど、どんな取材でも無理だと諦めない。それは凄い。とにかく「見る前に跳べ」を合い言葉に、ありとあらゆることを調べて、動き回って、当たりをつけて、そうしてだんだん正しい取材先の神髄に近づいていく。そういうめちゃめちゃな経験しているので、それは役に立っているかもしれませんね。

多国語展開がもたらす恩恵は大きい。まずはチャレンジを

今後、人工知能技術の発達によって、コンテンツそのものを自動生成するような仕組みまで実現すると予想されます。そのような人工知能の発達は、翻訳サービスにどのような影響を与えると思いますか?

皆さんも使ったことがあるかもしれませんが、Google翻訳が2016年の11月にバージョンアップして、画期的に品質が上がりました。すでに業務でGoogle翻訳を一部使用している翻訳会社もありますし、Google自身もGoogle翻訳で翻訳業務をやっているという話も聞きます。機械翻訳を使うことにどんなメリットがあるかというと、スピードが早くなること、安くなることです。そういうサービスを提供する会社は実際に出始めており、今後も増えていくと思います。

今後、多国語でオウンドメディアを企画制作する際に注意すべきことなど、何かアドバイスはありますか?

これは人から聞いた話なのですが、JTBなど旅行代理店も全然注目していなかったような山梨県の山奥にある旅館が、多国語でホームページを作ったところ、ものすごい勢いで海外から観光客が押し寄せるようになったそうです。多国語で自分のことを発信するというのは、国境を越えていろんな形で情報が出ていくということですから、私としては、「まあ、まずはやってみなはれ」とお勧めしたいですね。

それはすごいですね。多国語には、潜在的な魅力を引き出し、これまでにリーチできなかったターゲットに存在を知らしめる力があるのですね。そんな多国語展開を行う際に、注意したほうがいいことはありますか?

文化的な文脈まで考えると、Google翻訳などの機械翻訳では、まだまだ対応が難しいのではないかと思います。翻訳者というのは、文化を越えたり、文化の共通性を理解したり、追加説明や補足説明をしたり、時には「消す」という作業も必要になります。たとえばベトナム語の弊社のパートナーは、日本の大学を卒業して日本文化をきちんと理解しているベトナム人です。反対にベトナム語に変換するパートナーだったら、同じようにベトナムの文化をちゃんと知っている人でなければなりません。弊社は、文化をまたぐ差異や共通点など、説明を加えなければいけない点をきちんと理解している人たちと仕事をしています。どちらか片方だけ理解しているだけでは品質の高い翻訳はうまれません。

自分の国のことも、相手の国のことも、深く知っていないと説得力のある文章は生まれないということですね。
これから御社のことを、もっとこういう人に知ってほしい、こういう人に出会いたいというのはありますか?

様々な読者に納得していただける品質のものを提供しますので、多少コストはかかりますが、そういうものを望まれる方に弊社のことを知ってもらいたいですね。

翻訳家に必要なのは好奇心と日本語力

DNAメディア株式会社 代表取締役 中尾勝氏御社で人材を募集する際は、どういう人材がマッチすると思いますか?

毎年、新卒募集をしているのですが、日本語力と英語力があって、好奇心旺盛で、なおかつ調べる力がある人を選んでいます。翻訳の試験を行って、そこでは、誤訳がないか、英語力があるかどうかはもちろんのこと日本語として説得力のある文章が書けているかどうかを十分吟味します。日本語力については面白いくらい差が出ますね。その試験を通って今年入社してくれた人材が一年もたたないうちに活躍しています。

中尾社長から見て、日本語がきちんとしている人と、コミュニケーションをちゃんととれる人というのは、違いがあると思われますか?

その二つは、イコールではありませんね。通訳をやる人というのはたいてい外交的な性格の方が多い。英語をもっぱらコミュニケーションで使いたい人は商社などに就職します。それに対して翻訳をやる人は、どちらかというと外交的な性格ではありません。でも、こなれた説得力のある日本語を書くことができる人は、発信する潜在能力があるので、最終的には高いコミュニケーション力につながっていくと思っています

表現力が高い人というのは、時として内向的な方が多いような気がします。
ところで、今後はどのような事業に力を入れていきたいですか?

今度は、マーケティング関連の新しい事業を立ち上げていきたいと思っています。簡単ではないと思っていますが、社内に経験者がいるので、彼の経験を活かして、さらには経験豊富なブレーンも入れてデジタルマーケティングの世界をやっていこうと思っています。一年ぐらいで軌道に乗せたいですね。

最後に、この記事を読んでいる経営者やビジネスマンにお伝えしたいことがあればお願いします。

多国語対応については、やっぱり「やってみなはれ」とお伝えしたいです。やってみると、きっと思いがけないことが起こります。タイやベトナムから来日する観光客もかなり増えていますし、国民性や文化性も、日本との親和性が高い。ミャンマーも近代化の歩みがはじまり、新しい動きが出てきていますから、難しく考えずに、信頼できる会社と一緒に「やってみる」ことが大事だと思います。

 
時代のニーズに合わせ、メイン事業をコンテンツ製作から翻訳という、まったく異なる世界に移して成功を収めた中尾社長が率いるDNAメディア株式会社。どんなジャンルでも品質の高さにこだわってきたその姿勢で、次の目標であるマーケティング事業においても他社との差別化に成功されることを予感させられました。

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